“世界1位の食いしん坊“が発掘!日本全国「次世代スターシェフ」 【渡邉卓也シェフ】- GOOD EAT CLUB

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カートは空です

買い物を続ける

ぼくは、外食がだいすきだ。
絵画を目で見たり、
音楽を耳で聴いたりするように、
「食」という、料理人の表現を
口で鑑賞することが好きなのだ。

今まで120ヵ国以上を旅して、
感動する料理に出会うことに
人生を捧げてきた。

そんなぼくが今応援したいのは、
「日本の地方の若手シェフ」。

以前は日本の地方で
革新的なレストランを続けることは
難しかったけれど、
SNSが広がり、おもしろいことを
していれば話題になる地盤ができてきた。

働き方改革が進み、
平日に人々が移動しやすくなれば、
その流れはさらに加速するだろう。

日本の地方はこれからもっとおもしろくなる──。
今回は、そんな予感を確かなものにしてくれる、
次世代スターシェフの逸品を選んでみた。
とくとご賞味ください。

Tabebito

浜田岳文
すばらしい飲食店との出会いを求めて115カ国以上を渡り歩き、OAD世界トップレストランのレビュアーランキングで2年連続1位を獲得する、名実ともに世界一の美食家。
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北海道出身、パリで店を構える寿司職人 


今回ご紹介するのは、渡邉卓也シェフ。北海道のニセコ出身で、もともと北海道で寿司職人をしていた彼は、現在はパリに渡って「JIN 仁」という寿司屋を経営している。同店はミシュランの1つ星を獲得していて、ぼくはパリでナンバーワンの寿司屋だと思っている。

彼は北海道でもパリでも「地産地消」のスタイルを貫いていて、自分が作る料理に使用する食品の生産現場を、ちゃんと自分の目で見てたしかめたいというこだわりがある。

そんな彼は、本業である寿司屋の経営とは別に、彼の出身地である北海道の牧場や海藻屋と手を組み、北海道の素材だけでつくられた「海藻バター」を去年完成させた。渡邉シェフが日本に帰国する年に数回のタイミングで、何度も何度も試作を繰り返し、6年もの歳月をかけてつくったのだという。

その海藻バターを食べさせてもらったのだが、海藻と発酵バターの風味が合わさって、ぼくが今まで食べた国産のバターの中で一番と言っていいほど濃厚な味であった。海藻の噛み応えもアクセントになっていて、食べれば食べるほどに味が豊かになっていく。

今回はそんな渡邉シェフが作る「海藻バター」についてご紹介したい。

 

フランスで出会った「海藻バター」への感動 

渡邉シェフは幼い頃から生活の近くにバターがあった。北海道では、たらこなどの魚介類にバターを合わせて食べたり、おにぎりでもバター味のものが多かったりするそうだ。

だからフランスを初めて訪れて、ミシュランで2つ星を獲得したレストランのバターを口にしたとき、彼は、日本のバターとのあまりの違いに驚いたという。食べたのは海藻バター。風味の強さやおいしさが、今まで彼が食べたものとは別格だった。

日本では農政のテーマとして「乳製品を安定的に供給すること」が重要視されているため、多くの牧場では味の個性の追究にどうしても限界が出る。それに比べてフランスの乳製品は、それぞれの牧場が個性を出し、全体的に風味が強くてダイナミックで、ミルクの味が濃いことが特徴だ。彼が食べた海藻バターにはそこに海藻のエッセンスが加わって、驚くほどの風味を演出していた。

調べていくうちに、その海藻バターはフランスのブルターニュ地方で作られていることを知り、ブルターニュの寒い気候や、農業や酪農が盛んで自給率も高い地域性などが「北海道に似ているな」と思うようになったという。

「北海道にも牧場はたくさんあるし、海藻がとれる。こだわっている生産者を見つければ、北海道でも最高のバターが作れるのではないか」。そうして渡邉シェフは、本業である寿司屋の経営とは別に、バター作りの挑戦を北海道で始めることにしたのだ。

 

ビジネス度外視で、本当にこだわったものを

まず彼が取り掛かったのは、同じ志を持ってくれるパートナーを選ぶことだった。北海道産のおいしい牛乳でバターを作れる牧場と、海藻を加工している会社。そして見つけたのが、「山中牧場」と「オーガニックケルプ」だった。

渡邉シェフも、山中牧場もオーガニックケルプも、まさに職人。「ビジネスを目的にするのではなく、自分たちがやりたいことをやって、あとからビジネスがついて来ればいい」という考えが一致した。ビジネスよりも、スタイルや文化を重んじる。そのため、納得いくまで試作を重ね続けた。山中牧場の人は、なんとフランスのブルターニュにまで足を運び、バターの作り方を修業したのだという。オーガニックケルプは、納得いく商品が完成するまで、無償で海藻を提供し続けた。


最初、渡邉シェフは「フランスの海藻バターと同じようなもの」をつくろうと試行錯誤していた。けれど、フランスでとある人に「海藻もミルクも違うつくられ方がされているんだから、同じものができるわけないじゃない」と言われ、ハッとした。フランスと同じようなものではなく、北海道だから作れる海藻バターをつくろう。そう舵を切ることができたのだ。

海藻バターの構想が始まったのが2013年、完成したのは2019年。実に6年もの歳月をかけて作られた、本当に「ビジネス度外視」の取り組みだ。

 

食は「つながり」を生む。「つながり」から、いい食が生まれる

そうして完成した海藻バターは、山中牧場とつながりがあった催事場などを中心に、こだわった場所で発売されていたが、新型コロナウイルスの影響で、その催事自体がなかなか行えなくなってしまった。

しかし、つくったものはたくさんある。そこで渡邉シェフは、日本の飲食店が大変な状況にあることも踏まえ、つながりがある飲食店や、医療関係者にお弁当を作って寄付をする「スマイルプロジェクト」の現場などに、ギフトとして贈ることにした。

いろんなレストランのシェフに海藻バターを贈ると、お返しに何かをいただくことも多々あったという。飲食店同士の「一緒にがんばろうね」という励まし合い、食のつながりの連鎖が生まれた。

ぼくが渡邉シェフに対してすごいなと思っているところは、このように「人と人とのつながり」を大切にするところだ。彼は本当に情に厚く、だからこそ人望がある。

夏休みなど、彼が年に1・2回は日本に帰ってくるタイミングで、ぼくは彼と一緒にご飯に行ったりするのだけれど、彼の周りにはいつだっておもしろい人がたくさんいて、みんな彼にお店の経営や料理について相談をしたりする。そうやって人と人をつなぎ、慕われる力も、料理人の魅力の1つだと思う。

そんな熱い渡邉シェフが作り出す、こだわりの海藻バター。北海道産の青海苔や真昆布の味がダイレクトに感じられる、まさに北海道ならではの一品だ。ぜひ、食べてみてほしいです。

 

渡邉卓也

http://nfd-taku.com/taku_watanabe/

1976年生まれ。北海道ニセコ町出身。寿司屋の出前スタッフやトラックの運転手などの経歴を経て、日本料理店や創作和食店を経験し、28歳で独立。ダイニングレストランを開くと評判を呼び、札幌で「田久鮓」「TAKU円山」など4店舗を展開した。2013年にはフランス・パリに鮨と日本酒を楽しめる店「JIN 仁」をオープン。コンセプトに「地産地消」を掲げ、フランス近郊で獲れる魚をメインの食材に使う。2014年にはミシュランの一つ星を獲得した。
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北海道出身、パリで店を構える寿司職人 


今回ご紹介するのは、渡邉卓也シェフ。北海道のニセコ出身で、もともと北海道で寿司職人をしていた彼は、現在はパリに渡って「JIN 仁」という寿司屋を経営している。同店はミシュランの1つ星を獲得していて、ぼくはパリでナンバーワンの寿司屋だと思っている。

彼は北海道でもパリでも「地産地消」のスタイルを貫いていて、自分が作る料理に使用する食品の生産現場を、ちゃんと自分の目で見てたしかめたいというこだわりがある。

そんな彼は、本業である寿司屋の経営とは別に、彼の出身地である北海道の牧場や海藻屋と手を組み、北海道の素材だけでつくられた「海藻バター」を去年完成させた。渡邉シェフが日本に帰国する年に数回のタイミングで、何度も何度も試作を繰り返し、6年もの歳月をかけてつくったのだという。

その海藻バターを食べさせてもらったのだが、海藻と発酵バターの風味が合わさって、ぼくが今まで食べた国産のバターの中で一番と言っていいほど濃厚な味であった。海藻の噛み応えもアクセントになっていて、食べれば食べるほどに味が豊かになっていく。

今回はそんな渡邉シェフが作る「海藻バター」についてご紹介したい。

 

フランスで出会った「海藻バター」への感動 

渡邉シェフは幼い頃から生活の近くにバターがあった。北海道では、たらこなどの魚介類にバターを合わせて食べたり、おにぎりでもバター味のものが多かったりするそうだ。

だからフランスを初めて訪れて、ミシュランで2つ星を獲得したレストランのバターを口にしたとき、彼は、日本のバターとのあまりの違いに驚いたという。食べたのは海藻バター。風味の強さやおいしさが、今まで彼が食べたものとは別格だった。

日本では農政のテーマとして「乳製品を安定的に供給すること」が重要視されているため、多くの牧場では味の個性の追究にどうしても限界が出る。それに比べてフランスの乳製品は、それぞれの牧場が個性を出し、全体的に風味が強くてダイナミックで、ミルクの味が濃いことが特徴だ。彼が食べた海藻バターにはそこに海藻のエッセンスが加わって、驚くほどの風味を演出していた。

調べていくうちに、その海藻バターはフランスのブルターニュ地方で作られていることを知り、ブルターニュの寒い気候や、農業や酪農が盛んで自給率も高い地域性などが「北海道に似ているな」と思うようになったという。

「北海道にも牧場はたくさんあるし、海藻がとれる。こだわっている生産者を見つければ、北海道でも最高のバターが作れるのではないか」。そうして渡邉シェフは、本業である寿司屋の経営とは別に、バター作りの挑戦を北海道で始めることにしたのだ。

 

ビジネス度外視で、本当にこだわったものを

まず彼が取り掛かったのは、同じ志を持ってくれるパートナーを選ぶことだった。北海道産のおいしい牛乳でバターを作れる牧場と、海藻を加工している会社。そして見つけたのが、「山中牧場」と「オーガニックケルプ」だった。

渡邉シェフも、山中牧場もオーガニックケルプも、まさに職人。「ビジネスを目的にするのではなく、自分たちがやりたいことをやって、あとからビジネスがついて来ればいい」という考えが一致した。ビジネスよりも、スタイルや文化を重んじる。そのため、納得いくまで試作を重ね続けた。山中牧場の人は、なんとフランスのブルターニュにまで足を運び、バターの作り方を修業したのだという。オーガニックケルプは、納得いく商品が完成するまで、無償で海藻を提供し続けた。


最初、渡邉シェフは「フランスの海藻バターと同じようなもの」をつくろうと試行錯誤していた。けれど、フランスでとある人に「海藻もミルクも違うつくられ方がされているんだから、同じものができるわけないじゃない」と言われ、ハッとした。フランスと同じようなものではなく、北海道だから作れる海藻バターをつくろう。そう舵を切ることができたのだ。

海藻バターの構想が始まったのが2013年、完成したのは2019年。実に6年もの歳月をかけて作られた、本当に「ビジネス度外視」の取り組みだ。

 

食は「つながり」を生む。「つながり」から、いい食が生まれる

そうして完成した海藻バターは、山中牧場とつながりがあった催事場などを中心に、こだわった場所で発売されていたが、新型コロナウイルスの影響で、その催事自体がなかなか行えなくなってしまった。

しかし、つくったものはたくさんある。そこで渡邉シェフは、日本の飲食店が大変な状況にあることも踏まえ、つながりがある飲食店や、医療関係者にお弁当を作って寄付をする「スマイルプロジェクト」の現場などに、ギフトとして贈ることにした。

いろんなレストランのシェフに海藻バターを贈ると、お返しに何かをいただくことも多々あったという。飲食店同士の「一緒にがんばろうね」という励まし合い、食のつながりの連鎖が生まれた。

ぼくが渡邉シェフに対してすごいなと思っているところは、このように「人と人とのつながり」を大切にするところだ。彼は本当に情に厚く、だからこそ人望がある。

夏休みなど、彼が年に1・2回は日本に帰ってくるタイミングで、ぼくは彼と一緒にご飯に行ったりするのだけれど、彼の周りにはいつだっておもしろい人がたくさんいて、みんな彼にお店の経営や料理について相談をしたりする。そうやって人と人をつなぎ、慕われる力も、料理人の魅力の1つだと思う。

そんな熱い渡邉シェフが作り出す、こだわりの海藻バター。北海道産の青海苔や真昆布の味がダイレクトに感じられる、まさに北海道ならではの一品だ。ぜひ、食べてみてほしいです。

 

渡邉卓也

http://nfd-taku.com/taku_watanabe/

1976年生まれ。北海道ニセコ町出身。寿司屋の出前スタッフやトラックの運転手などの経歴を経て、日本料理店や創作和食店を経験し、28歳で独立。ダイニングレストランを開くと評判を呼び、札幌で「田久鮓」「TAKU円山」など4店舗を展開した。2013年にはフランス・パリに鮨と日本酒を楽しめる店「JIN 仁」をオープン。コンセプトに「地産地消」を掲げ、フランス近郊で獲れる魚をメインの食材に使う。2014年にはミシュランの一つ星を獲得した。

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