「創業100年超え」の名店 -大阪の底力編- はり重 - GOOD EAT CLUB

カート

カートは空です

買い物を続ける

味にうるさい大阪人の舌を
満足させ続けてきた老舗の味には、
守りたい食文化への思い、
そして唯一無二の職人技がありました。

伝統を受け継ぎながら、
ときには新しい風を取り入れて。

造り手が人生を込めた
心に響く味を届けます。

Tabebito

ダンダ姐さん
大阪生まれのフリーライター・団田芳子。関西の食マガジンを中心に、食・旅・大阪をテーマに執筆。NHKカルチャー「食べ歩き講座」講師。著書に、“ノンベの姐御”と料理人に恐れられ、もとい親しまれる著者が惚れ込んだ料理人たちの味を描いた『私がホレた旨し店 大阪』(西日本出版社)、『大阪名物』(新潮文庫・共著)など。
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大阪のお正月に欠かせない、はり重ブランドのお肉

関西の年末の恒例行事。神戸っこが、お気に入りの焼き豚のために、長蛇の列を作るように、大阪人は、道頓堀の角に列を成す。

「お節料理に、この店のコールビーフは欠かされへんねん!」「正月はちょっと奮発して、ここのお肉ですき焼き!」と、決めている大阪のご家庭の何と多いことかと、毎年目を見張るほど。

1Fにある精肉店のショーケースに鎮座するコールビーフ

「今年はこんな状況ですから、やはり少なめだなと午前中は思っていたのですが……」。午前中は混むから避けて、と皆さん考えることは同じだったようで、結局売上げは例年と変わらなかったらしい。密にならないように気配りされて、それはそれで大変だったようだけど、飲食店に厳しい風吹くこのご時世でも、この店が安泰だと聞くと、ちょっと安心する。

 

堂々木造和風の構えは、ミナミのシンボル

道頓堀と御堂筋が交わる角。大阪ミナミの中でも一等地と言えるこの場所に佇む、木造和風3階建ての重厚な構えが何とも頼もしい、はり重。大正年間に創業し、当時、一大繁華街だった新世界を経て、戦後、この場所に移り同時に洋食もスタート。

そうして今では―。ミナミで買い物ついでに腹ごしらえするなら、はり重カレーショップ、ちょっとした記念日には洋食・はり重グリル、松竹座でお芝居を観た帰りには日本料理・はり重本店のお座敷で、しゃぶしゃぶかすき焼き。これぞ正しき浪花マダムのはり重三段活用―などと申しまして、和牛専門店・はり重は、大阪人には、いや、芸の街・ミナミの老舗として、役者や芸能人にも、つとに有名な店でございます。

日本料理・はり重本店のお座敷でいただけるすき焼きは7000円〜

道頓堀本店の2階の座敷から、御堂筋を見下ろしながらすき焼きなどいただけば、大変に豪勢な気分を味わえます。まず、ガラガラと格子戸を開ければ、広い玄関先に、昔で言う“下足番”の方が待機しておられるのだから! 靴を脱いで上がる店はミナミにも数有れど、こういう粋なサービスはここだけではなかろうか。「今から食事するのに、靴を触るのはイヤでしょう」と、さらりと仰ったのは先代だったか。今、3代目を継いだ藤本有吾さんも、この上方流儀の洒脱さをもしっかり継承してくださっています。

 

「なんか知らんけどおいしい」には、理由があった

さて、1階で精肉も商うはり重の牛肉は、松阪だ神戸だというブランドは謳わない。初代から「肉の目利きは社長自らが行うべし」との家訓に則って、産地やランクにこだわらず、はり重の名にかけて、その日に最も良いと見た国産の黒毛和牛のメスの枝肉を仕入れる―――。

左ははり重入社45年のベテランさん。右は今年入社の新人さん。熟練の職人から、若手へと技が継承されていくのですね

と、ここまでは、今までに何度か取材してお聞きしていたのだけど。今回、さらにその先を聞いて驚いたことがありました。仕入れた肉は、岸里にある巨大な肉の貯蔵庫でおよそひと月寝かせるというのです。「カビが生じたのを、きれいにカットします。歩留まりはよくないけど……」と3代目が言いかけるのを、失礼にもいや待って待ってと遮ってしまった私。それって、ここ10年ばかり前から流行りのウェットエイジングってヤツですやん。はり重さんは熟成肉やったんですか!? 「あ、そうなんです。熟成が流行ってましたよね」。雑誌でさんざん熟成特集なんてやったけど、はり重さんが登場されたことはなかったはず。「はい。アピール下手で、殊更、熟成って言ってないんです。でも、初代のときから、“これがうまい”と知ってたみたいですね。考えてみれば、今のようにメス牛の肉がしつこくないのは融点が低いからとか、熟成でうまみ成分が云々って、解明されてない時代から、“なんか知らんけど、こうしたらうまい”と知ってたのはスゴイかもしれませんね」。かも、じゃなくて、めっちゃスゴイですよ! しかも、この道45年の職人さんが、肉の状態を見極めて、「よし、今や」とチェーンソーで枝肉を骨ごと切って、「これをすき焼き用に、こっちはコールビーフに」と仕分けるのだとか。社長が代々肉を目利きするのみならず、肉を熟成させ、ピークを見極める目を持つ職人が居るからこそ、はり重の肉はうまかったのか……。“なんか知らんけど、はり重のお肉はおいしい”と、年末に行列を作る大阪人の舌に間違いはなかったわけだ。

コールビーフは、グリルはり重でも人気のメニュー。お家でも、野菜を添えれば、立派なオードブルに

その間違いのない肉を使った「コールビーフ」が私のお気に入り。ん? コールビーフ?  冷製ローストビーフと訳されたりもします。大正・昭和初期にはよく使われていた名称だそう。今ではあまり見掛けなくなりました。作り方はシンプル。肉に塩を擦り込み、オーブンで焼き目を付け、大鍋で煮込む。さらに冷蔵庫で冷やして味わいと肉質をギュッと締める。けれども、はり重の料理人の中で作れるのは2人だけなのだそう。肉の火入れを見極めるのがポイント。その時々の肉質や大きさによっても違うから。火が通りすぎても弱すぎても、あの滑らかな食感や溢れるうまみは実現しないのだそう。

この「コールビーフ」と「すき焼き肉」は、はり重精肉販売店でも1・2位を争う人気者! これをお取り寄せできるというのだから。大阪が誇る老舗・はり重の矜持をぜひ、ご家庭で味わってくださいね。

ボリュームたっぷり400gの「コールビーフ」は、甘辛くクリアなうまみの特製タレ付き
すき焼き肉にはお肉の味を際立たせる、特製割下付き。牛骨スープをメインに醬油と砂糖で仕上げたあっさりと上品な味わいは、関西風割下と言えるかも。この割下があれば、ずうっと食べ続けられる

 

はり重

大阪市中央区道頓堀1-9-17
06-6211-2980
https://www.harijyu.co.jp/

大正8(1919)年、大阪・堺にて精肉店として創業。数年後、すき焼き屋兼精肉販売の店として新世界へ移転。昭和23(1948)年、現在の道頓堀へ。同時に洋食もスタート。カレーショップやグリルも人気。精肉販売としては大阪の百貨店でもお馴染み。
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大阪のお正月に欠かせない、はり重ブランドのお肉

関西の年末の恒例行事。神戸っこが、お気に入りの焼き豚のために、長蛇の列を作るように、大阪人は、道頓堀の角に列を成す。

「お節料理に、この店のコールビーフは欠かされへんねん!」「正月はちょっと奮発して、ここのお肉ですき焼き!」と、決めている大阪のご家庭の何と多いことかと、毎年目を見張るほど。

1Fにある精肉店のショーケースに鎮座するコールビーフ

「今年はこんな状況ですから、やはり少なめだなと午前中は思っていたのですが……」。午前中は混むから避けて、と皆さん考えることは同じだったようで、結局売上げは例年と変わらなかったらしい。密にならないように気配りされて、それはそれで大変だったようだけど、飲食店に厳しい風吹くこのご時世でも、この店が安泰だと聞くと、ちょっと安心する。

 

堂々木造和風の構えは、ミナミのシンボル

道頓堀と御堂筋が交わる角。大阪ミナミの中でも一等地と言えるこの場所に佇む、木造和風3階建ての重厚な構えが何とも頼もしい、はり重。大正年間に創業し、当時、一大繁華街だった新世界を経て、戦後、この場所に移り同時に洋食もスタート。

そうして今では―。ミナミで買い物ついでに腹ごしらえするなら、はり重カレーショップ、ちょっとした記念日には洋食・はり重グリル、松竹座でお芝居を観た帰りには日本料理・はり重本店のお座敷で、しゃぶしゃぶかすき焼き。これぞ正しき浪花マダムのはり重三段活用―などと申しまして、和牛専門店・はり重は、大阪人には、いや、芸の街・ミナミの老舗として、役者や芸能人にも、つとに有名な店でございます。

日本料理・はり重本店のお座敷でいただけるすき焼きは7000円〜

道頓堀本店の2階の座敷から、御堂筋を見下ろしながらすき焼きなどいただけば、大変に豪勢な気分を味わえます。まず、ガラガラと格子戸を開ければ、広い玄関先に、昔で言う“下足番”の方が待機しておられるのだから! 靴を脱いで上がる店はミナミにも数有れど、こういう粋なサービスはここだけではなかろうか。「今から食事するのに、靴を触るのはイヤでしょう」と、さらりと仰ったのは先代だったか。今、3代目を継いだ藤本有吾さんも、この上方流儀の洒脱さをもしっかり継承してくださっています。

 

「なんか知らんけどおいしい」には、理由があった

さて、1階で精肉も商うはり重の牛肉は、松阪だ神戸だというブランドは謳わない。初代から「肉の目利きは社長自らが行うべし」との家訓に則って、産地やランクにこだわらず、はり重の名にかけて、その日に最も良いと見た国産の黒毛和牛のメスの枝肉を仕入れる―――。

左ははり重入社45年のベテランさん。右は今年入社の新人さん。熟練の職人から、若手へと技が継承されていくのですね

と、ここまでは、今までに何度か取材してお聞きしていたのだけど。今回、さらにその先を聞いて驚いたことがありました。仕入れた肉は、岸里にある巨大な肉の貯蔵庫でおよそひと月寝かせるというのです。「カビが生じたのを、きれいにカットします。歩留まりはよくないけど……」と3代目が言いかけるのを、失礼にもいや待って待ってと遮ってしまった私。それって、ここ10年ばかり前から流行りのウェットエイジングってヤツですやん。はり重さんは熟成肉やったんですか!? 「あ、そうなんです。熟成が流行ってましたよね」。雑誌でさんざん熟成特集なんてやったけど、はり重さんが登場されたことはなかったはず。「はい。アピール下手で、殊更、熟成って言ってないんです。でも、初代のときから、“これがうまい”と知ってたみたいですね。考えてみれば、今のようにメス牛の肉がしつこくないのは融点が低いからとか、熟成でうまみ成分が云々って、解明されてない時代から、“なんか知らんけど、こうしたらうまい”と知ってたのはスゴイかもしれませんね」。かも、じゃなくて、めっちゃスゴイですよ! しかも、この道45年の職人さんが、肉の状態を見極めて、「よし、今や」とチェーンソーで枝肉を骨ごと切って、「これをすき焼き用に、こっちはコールビーフに」と仕分けるのだとか。社長が代々肉を目利きするのみならず、肉を熟成させ、ピークを見極める目を持つ職人が居るからこそ、はり重の肉はうまかったのか……。“なんか知らんけど、はり重のお肉はおいしい”と、年末に行列を作る大阪人の舌に間違いはなかったわけだ。

コールビーフは、グリルはり重でも人気のメニュー。お家でも、野菜を添えれば、立派なオードブルに

その間違いのない肉を使った「コールビーフ」が私のお気に入り。ん? コールビーフ?  冷製ローストビーフと訳されたりもします。大正・昭和初期にはよく使われていた名称だそう。今ではあまり見掛けなくなりました。作り方はシンプル。肉に塩を擦り込み、オーブンで焼き目を付け、大鍋で煮込む。さらに冷蔵庫で冷やして味わいと肉質をギュッと締める。けれども、はり重の料理人の中で作れるのは2人だけなのだそう。肉の火入れを見極めるのがポイント。その時々の肉質や大きさによっても違うから。火が通りすぎても弱すぎても、あの滑らかな食感や溢れるうまみは実現しないのだそう。

この「コールビーフ」と「すき焼き肉」は、はり重精肉販売店でも1・2位を争う人気者! これをお取り寄せできるというのだから。大阪が誇る老舗・はり重の矜持をぜひ、ご家庭で味わってくださいね。

ボリュームたっぷり400gの「コールビーフ」は、甘辛くクリアなうまみの特製タレ付き
すき焼き肉にはお肉の味を際立たせる、特製割下付き。牛骨スープをメインに醬油と砂糖で仕上げたあっさりと上品な味わいは、関西風割下と言えるかも。この割下があれば、ずうっと食べ続けられる

 

はり重

大阪市中央区道頓堀1-9-17
06-6211-2980
https://www.harijyu.co.jp/

大正8(1919)年、大阪・堺にて精肉店として創業。数年後、すき焼き屋兼精肉販売の店として新世界へ移転。昭和23(1948)年、現在の道頓堀へ。同時に洋食もスタート。カレーショップやグリルも人気。精肉販売としては大阪の百貨店でもお馴染み。

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