こんにちは!
足湯に浸かりながら、失礼します!料理研究家の伊地知潔(いぢちきよし)です。

いつもはASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)やPHONO TONES(フォノ・トーンズ)というバンドでドラムを叩いてます。
いま僕は、最っ高に気持ちのいい島に来ています。

今回やってきたのは、日本の最西北端にある長崎県の離島「対馬」。晴れた日には韓国・釜山の街並みも望める、国境の島です。
僕が初めて対馬に来たのは、2016年に日韓のミュージシャンが一堂に集まった「つしまボーダーアイランドフェスティバル」の時。そこで対馬の自然の素晴らしさと、現地で食べるお魚の美味しさに感動しました。

対馬って、本当にお魚天国なんですよ!
長崎県は漁獲できる「魚の種類が日本一」で、その多くが対馬周辺の海域で獲れているそう。暖流とプランクトンの多い寒流がぶつかるところに位置し、「魚がわきあがる」と評される日本屈指の漁場なんです!

島民の方とBBQをしたら大皿の刺盛りがドーンと出てきて、「こんなのでよかったら食べてください。少し炙って食べてもおいしいですよ」って。そんなこと、こっち(東京)ではありえないでしょ。

聞いたら、これって対馬では普通のことらしいんです。「それだけ魚が身近な存在なんだな」って感じましたね。食べるのが大好きな僕は、それ以来、対馬の魅力に惚れ込んでしまったんです。

海をはじめ豊かな自然にあふれ、海の幸に恵まれたお魚天国「対馬」。
実はいま、そんな対馬である問題が起きていると、対馬の友人たちから聞きました。
なんと、対馬でかつてないほど魚が獲れず、島全体が困っているというのです。
「お魚天国だった対馬に、一体何が・・・!?」
実際に対馬を訪れ、現地で水産加工販売や飲食店を営む「丸徳水産」専務の犬束ゆかりさんにお話を伺いました。

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お魚天国で魚が獲れなくなったワケ
伊地知潔(以下、伊地知):
お魚が獲れなくなってると聞いたんですけど、対馬の海で何が起きているんですか?
犬束ゆかり(以下、犬束):
今、対馬の海では「磯焼け(いそやけ)」が問題になってます。磯焼けっていうのは、海藻を魚が食べ尽くして海底が砂地になってしまうことです。

伊地知:
磯焼け……!? それによってどんな問題が起きるんですか?
犬束:
海藻はサザエやアワビの食料であり住みかで、小魚やイカの産卵場所でもあるんです。海藻がなくなると、それらをエサとする魚介類が育たなくなったり、獲れなくなったりします。
伊地知:
魚が獲れなくなると、漁師さんや海女さんの生活が大変ですね…。
犬束:
そうなんです。この魚を見てください。イスズミやアイゴといった海藻をエサにする「食害魚」と呼ばれる魚が、海藻を食べ尽くすんです。

伊地知:
なるほど……食害魚って初めて聞きましたが、昔はいなかったんですか?
犬束:
私の小さい頃もそうした魚はいましたが、海水の冷たい冬にはほとんど活動していないので、海藻が成長できていたんです。でも、最近は温暖化の影響で冬でも海水温が上がり、食害魚が1年中活発に活動するので磯焼けは年々ひどくなっています。


伊地知:
海の色が…ぜんぜん違う…。これ、食害魚をなんとか減らすことはできないんですか?
犬束:
いま、食べて減らそうとしています。
伊地知:
えっ!? 食害魚って食べられるんですか!?

海の厄介者を食べ、対馬の海を守る「そう介プロジェクト」
犬束:
イスズミやアイゴは特有の臭みがあって、もともと対馬の人たちは食べません。食害魚は年々増えていて、多い日にはおよそ1トンものイスズミが水揚げされ、そのすべてが捨てられていました。

伊地知:
臭みがある魚とはいえ、あまりにもったいないですね……。
犬束:
もしその臭いさえ取り除くことができれば、みんなが美味しく食べて漁師さんの稼ぎにもなるし、磯焼けも防げるし、こんなにいいことはないんじゃないかと思ったんです。
伊地知:
海を荒らし、今まで捨てられてきた魚の価値がプラスに転じるかもしれない。
犬束:
まさにそうなんです。そこからは試行錯誤の日々で。イスズミの臭みは内臓や血合いが一因だと気付き、捌く際にその箇所を取り除いて加工するようにしました。さらに、捌いた身を何度も水にさらして丁寧に血抜きをして、しばらく冷凍保存することで臭みが抜けることもわかりました。そうした下処理によって、臭みもなくなり、おいしく食べられるようになったんです。食べてみますか?

伊地知:
おいしいですよ、これ! 臭み、全然感じないです! ほのかに魚の香りがしますけど、イヤじゃない。白身魚特有の淡白な味わいですが、旨味もしっかりとありますし、これならいろんな料理に使えますよ!
犬束:
ありがとうございます。こうやってイスズミを食べて対馬の海を守り、漁師さんたちを助けるプロジェクトを立ち上げたんです。それが「そう介(すけ)プロジェクト」です。
伊地知:
そう介・・・?

犬束:
もともとは海の厄介者です。島のみんなに身近な存在に感じてもらえるように、イスズミを素朴で親しみやすい「そう介」と呼ぶことにしたんです。「そう介」の「そう」には、イスズミを創意工夫でおいしいお惣菜に変える、海藻を守ろう、この壮大なプロジェクトを成功させたい、みんなの海への想いといった、いろんな「そう」の意味が込められています。また「介」には、そんな人たちの想いを介(助)けたいという願いがあります。


犬束:
今では対馬の小中学校の給食でも食べられるようになって、子供たちが家に帰ると「今日、そう介食べたよ〜!」って話してくれるんです(笑)。食害魚として海の厄介者だった魚を「そう介」と呼ぶことで、いろんな人が協力してくれるようになり、少しずつ磯焼けの問題を知る人が島全体に広がっていきました。

伊地知:
食害魚だったイスズミを「そう介」と呼ぶことで、島のみんなが海の問題を知って協力してくれるように……。「そう介プロジェクト」、素晴らしい活動ですね。
犬束:
いえいえ、まだまだです。ご家庭でも食べてほしいんですが、なかなか家庭料理に使われなくて……。そこで、伊地知さんの料理研究家としての力をお借りしたいんですよ。「そう介」でおいしい料理を作ってもらえませんか?

伊地知:
もちろんです。協力しますよ! 対馬が大好きですし、料理で対馬の自然が守られるなら理想的です。僕らがおいしく食べるだけで、対馬のみなさんや環境に役立つのがすごく素敵だなと。
「そう介」を使ったアレンジレシピを作ってみた
伊地知:
ということで、さっそく「そう介」を使ったレシピを作ってみました。まず考えたのが「たたっこ」です! 対馬の漁師めし「たたっこ」をアレンジしてみたいと思います。

伊地知:
いろんな魚をすり身にして食べるという漁師町ならではの食べ方がいいなと思ったんです。

伊地知:
まずは適当な大きさに刻んだ魚と塩をフードプロセッサーですり身にします。多少、大きさが揃わなくても問題なし。それが食感のアクセントになります。

伊地知:
すり身になったら、みじん切りにしたニンジンや玉ねぎ、紅生姜を入れて混ぜます。そこに皮ごとすりおろした大和芋を加えるのがポイント! ふんわりした食感になるんです。大和芋がなければ長芋でも代用OKです!


伊地知:
混ぜ合わせたらポリ袋に入れ、袋の端を切ったところから絞り出して熱した油に直接入れていきます。キツネ色になるまで揚げればできあがりです!


犬束:
すごいアイデア! 見た目はソーセージみたいで、食べるとジューシーでおいしい! 紅ショウガの酸味で後味もサッパリ。これなら魚嫌いの人も食べられますよ!

伊地知:
紅ショウガはさつま揚げをヒントにしたんです。今回は揚げましたが、この「たたっこ」はけっこう万能なんです。これからの寒くなる季節は、つみれ鍋やおでんの具材にもいいですし、ハンバーグみたいに丸めて焼いて子供のお弁当に入れるのもおすすめです。この「たたっこ」ひとつあれば、焼いてジューシーに、煮てふんわりと、揚げて香ばしく……といったどんな調理方法にもアレンジできます。お魚と野菜が主な材料なので、ヘルシーなのがすごく嬉しい。


犬束:
家庭で食べてほしかったので、ぴったりのレシピです! 伊地知さんおすすめの生姜醤油とも合いますね〜


▶︎伊地知さんのレシピをもとに「たたっこ」を商品化しました! すり身状のたたっこを冷凍でお届けします。袋から絞り出して、ご家庭でいろんな料理にチャレンジしてみてください。
2品目は「魚餃子」です。



伊地知:
これもとっても簡単です。普通の餃子で使う豚肉を「そう介」に変えて、アクセントに生姜を使います。一口頬張ると、皮はパリッと魚の餡はしっとりジューシーで、生姜の香りとともに旨味が広がっていきます。実際に食べてもらうと「えっ? これってホントに捨てていた魚なの?」って感じてもらえるんじゃないかな。

犬束:
餃子にしたら、子どもから大人まで誰もがおいしく食べられますね。お魚なのに意外なほどジューシーで、私が作るよりおいしい(笑)。
伊地知:
多くの人に食べて欲しかったので、あえて誰もが食べやすい味付けにしました。お魚の餃子なので、ナンプラー、スイートチリ、酢を混ぜたタレでエスニック風にして食べるのもオススメですよ。魚でできているもの同士、ナンプラーと相性抜群です。


▶︎伊地知さんのレシピをもとに「魚餃子」を商品化しました!

伊地知:
「たたっこ」「魚餃子」ともに飽きのこない優しい味つけなので、子どもから大人までおいしく食べてもらえるはずです。おいしく食べて、ヘルシーで、さらに対馬の応援にもなる。一石三鳥の商品なので、みんなで食べて対馬を応援できたら素敵だなと!
対馬の「山のフードロス」も美味しく解決
伊地知:
実は、対馬には磯焼けという「海の問題」に加えて、鹿やイノシシが山や畑の作物を食い荒らす「山の問題」でも悩んでいるという話を聞きました。人口3万人弱の対馬で、鹿だけで4万頭以上いるんだとか……。人の数より多いんです!
対馬で人と野生動物が共存できる社会を目指して活動する「daidai」代表理事・齊藤ももこさんによると、害獣を捕まえるハンターのほとんどが65歳以上の高齢者だそう。

伊地知:
ハンターの役割がきちんと理解され、目指す人が増えないと対馬の害獣被害は今後増える一方だと危機感をつのらせます。多くの人に鹿肉やイノシシ肉を食べてもらうことを通じて、対馬の山の問題を知ってほしいと日々メッセージを発信しています。
今回は、対馬の鹿肉を使った「ジビエ餃子」と「ジビエカレー」も商品化しました。こちらも自信作ですので、ぜひ食べてみてください。(詳しくは下記の商品ページをご覧ください)




みんなで食べて対馬を応援しよう「対馬GOOD EAT PROJECT」
今回、対馬が抱える自然環境の問題を聞き、料理研究家として商品をつくる形で微力ながら協力させてもらいました。
「子どもの頃から海が好きでしたし、今も海からの恵みで生活しています。その中で海が変わっていく姿をなんとかしたかったんです」と語ってくれた犬束さん。魚が獲れなくなることで漁師をやめる人も少なくないなか、まずは自分から変わらなきゃと笑顔で前向きなメッセージを発信し続けています。

「そう介プロジェクト」をきっかけに、対馬のお魚天国復活への道のりはまだ第一歩を踏み出したばかり。磯焼けは海という自然が抱える問題なので、僕自身、すぐには解決しないと思います。
今回の商品開発は、対馬を応援する企画のあくまで第1弾。引き続き、対馬の魅力や食文化を発信していきます。その受け皿としてこのGOOD EAT CLUBで「対馬GOOD EAT PROJECT」を立ち上げます。小さい試みながらも、対馬のことをみなさんに知ってもらえたら幸いです。
みんなで食べて対馬を応援しましょう。ご支援、よろしくお願いします!

【イベント情報】
伊地知潔さんと、渋谷の「MOJA in the HOUSE」で今回の旅の様子をレポートするトークイベント『対馬 GOOD EAT PROJECT』をオンライン&リアルイベントにて開催します!(11/13の17時より開催)
伊地知さんに商品開発していただいたメニューを食べながら、オンラインで犬束ゆかりさんをはじめ対馬のみなさんと触れ合いながら、対馬の食文化の魅力を紹介するイベントです。イベント・チケットの詳細については、こちらのページをご覧ください。
対馬では捨てられていた魚を美味しいすり身に! 対馬の漁師めし「たたっこ」をアレンジした、煮てよし、焼いてよし、揚げてよしの万能すり身です。紅生姜を効かせて爽やかに仕上げました。おいしく食べて、僕と一緒に対馬を応援しませんか?