小手先のギミックなんかいらない。おいしいものも、音楽も。

小手先のギミックなんかいらない。おいしいものも、音楽も。

「京都ネーゼ」のカルボナーラは、
ふつうの卵じゃなくて本当に濃い卵を使ってる。

あんな濃いカルボナーラは初めてだったし、
他では食べられない。

他と違う何か特別なものなんか入れてないはず。
僕はそういうものが好きなんです。
ふつうの作り方なんだけど、全然違う。
何が違うのかって、わからない。

それは、僕の詩が「何で売れんの?」と同じで。
自分でも何が違うか
わかんないんだもん(笑)。

「美味しい」に答えなんてない。そもそも「美味しい」ということを評価すること自体が難しい。世界に一人のわたしが愛する、大切な食。それが、GOOD EAT(グッドイート)。

特集「わたしのGOOD EAT」では、この世にあまた存在する美味しいものたちを「美食」という枠に閉じ込めずに、一人ひとりの「愛」という軸で語ってもらう企画です。今回は、作詞家の松本隆さんに愛すべき食についてお話を伺いました。

「松本隆さん、あなたにとってのGOOD EATは、なんですか?」

 

『風街ろまん』から50年

1971年にはっぴいえんどとして『風街ろまん』というアルバムをつくってから今年で50年。「風街」という言葉を編み出したのは、1964年に東京オリンピックがあったのがきっかけなんです。

『風街ろまん』は1971年にリリースされた、バンド「はっぴいえんど」の2ndアルバムであり、東京オリンピックを境に失われてしまった東京の原風景を「風街」という架空の都市に託して現出させようとしたコンセプト・アルバム

オリンピックの前に、自分の住んでいる土地と家が「オリンピック道路」という計画道路になったんです。

もともと僕の家は、南青山にあった広い庭のある土地。そのまま残っていたら遊んで暮らせたかもしれない(笑)。あくせく歌謡曲を書く必要もなかったかも。だから、道路になってよかったのかなとも思うけれど。

古き良き東京は、あのときに大半が失われてしまったんだ。その後、古い街が整理され、きれいなビルが建った。でも、ビルって結局、どこも同じで、その土地ならではのビルなんてない。そこの土地にしかないものがいいものだし、残すべきものだと僕は思う。

食もそうだと思う。食は、歴史の積み重ね。だから歴史あるところには文化も残るし、食も豊かなんです。

たとえば、僕は喫茶店が好きですが、神戸や京都は、古い喫茶店が残っているんです。 東京にはほとんどなくなってしまった。もう指折り数えるくらいしか残ってない。カレーが食べられる喫茶店とか、神保町にいくつか残っているだけ。

だいたい喫茶店って一代なんです。その代で終わるから、マスターがいなくなったらそれで終わり。継承されない。それはしょうがない。僕らの仕事も、作曲をするとか詩を書くとか、それも一代限り。子どもに教えようがないことだから。

小手先のものは、どうもダメ

僕が喫茶店を好きなのは、なんだろう、匂いなのかな。コーヒーの匂いが好きだから。いい喫茶店は、ドアを開けると、ほわーんって、コーヒーを煎るいい匂いがするじゃない。淹れ方も、サイフォンで淹れるか、ろ紙で蒸すか、それによってまた匂いが全然変わる。

京都の二条の辺りに、ちっちゃな喫茶店があるんです。そこはコーヒーを紙ではなく布で漉す。ネルドリップなのかな。淹れるときに、それを叩くんだ。パーン!って。命かけてるなって(笑)。

パーンって音が、すごくいい音でね。コーヒー一杯にものすごく気合いを入れてるんだなって。そういうことに命をかける人は、おもしろいと思うし、感心する。ギミックが一切ないからね。

僕がきらいなのは、ギミック。 小手先のものは好きじゃない。お寿司で譬えるなら、最後に金粉散らしちゃう、みたいなのはどうもダメ。僕は、寿司屋に行くと、お酒を呑まないのでアテはそこそこ、いっぱい握ってくれって頼んじゃうほう。

だから、やたら高級食材で、キャビアてんこ盛りとかも苦手。そもそも寿司は、気取った料理じゃないんです。その歴史をたどれば保存食だったわけですから。

「京都ネーゼ」のカルボナーラ

三条にあるイタリアン「京都ネーゼ」もそう。ギミックじゃない。シェフの森博史さんは、僕が京都に移り住んで間もない頃、すごく親切にしてくれた恩人。いろんな美味しいお店を教えてくれたんだ。
美味しいのはカルボナーラパスタとボロネーゼのパスタ。絶品です。特におすすめは、カルボナーラふつうの卵じゃなくて本当に濃い卵を使ってるんです。

 

京都では有名な京都大原山田農園の平飼い有精卵「野たまご」。山田さんはいかに鶏にとってストレスがない環境を作るかを一番に考えたうえで、メスの精神状態を安定させるために、一緒にオスを飼育している。京都ネーゼのカルボナーラは、この「野たまご」の卵黄が贅沢に5つも使われているという

京都大原山田農園の卵を使っていて。ちょっと田舎のほうで大切に育てられたいい鶏だと思う。あんなに濃厚なカルボナーラを味わったのは人生初。「京都ネーゼ」じゃないと食べられない。みんなにも勧めたいなあ。

結局、僕は、そういうものが好きなんです。どこにでもあるような料理で、作り方もシンプル、でも「全然美味しいじゃん」っていうもの。それは和食でも洋食でも、中華でもそう。

京都ネーゼのカルボナーラも、他と違う何か特別なものなんか入れてないはずふつうの作り方をしているけれど、全然違うそれが食の、醍醐味だよね。そういうものを探し当てると、とてもうれしい。

美味しいものは次元が違う。ギミックなんかいらない

料理と音楽ではやっていることはまったく違うし、そもそもジャンルが違う。でも同じだと僕は思う。古くなって、忘れられてしまうものもあるけれど、時代を超えて残っていくものもあるという意味で。ギミックのない料理はずっと残っていく。僕が作った歌もそれと同じじゃないかなって。

なぜ僕の歌が古びないのかとよく聞かれるけれど、理由はわからない。みんなと同じように作ってるだけ。特に変わったことはしてないんだ。自然の旨味成分のみ。僕自身、何もやってない。ギミックはゼロだから。

美味しいものは次元が違う。作り方が特別なんじゃなくて次元が違う。その理由は? って聞かれても、誰にもわからないと思う。それは、僕の詩が「なぜヒットするのか?」と同じこと。自分でもわからないんだ。

 

【リリース情報】

松本隆50周年を彩る、新たな風街へようこそ
松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

初回限定生産盤(CD+LP+特典本「100%松本隆」)
COZP-1747-1748:¥11,000(税込)
通常盤(CD のみ)
COCP-41453:¥3,300(税込)
全曲配信(ダウンロード&サブスク)

 

撮影協力:OIL(Cafe/Bar)
京都市中京区白壁町442 FSSビル6F

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