
最近、お茶って飲んでますか?
ペットボトルでは飲むけど、料理に合わせて飲むお茶の種類を選んだり、生活のシーンに合わせて飲むお茶を考えたり…あんまりしませんよね?
でも本当はお茶って、私たちが知るよりはるかに奥が深くて、多彩な存在なんです。
そんな事実を教えてくれたのが、日本各地で地域に紐付いたプレミアムな食体験を提供する、幻の野外レストラン「DINING OUT」チームの食材担当・宮内隼人さん。
今回は、食材発掘のプロである宮内さんが、「DINING OUT」過去開催地の中で出会った、こだわりのお茶屋さんを3名紹介してくれました。

「町のすべての住民の好みを把握したお茶屋さん」
「天皇杯授与歴のある高千穂の山の上でつくられたお茶」
「オシャレで今風なんだけど、140年以上続く超老舗のお茶屋さん」
宮内さんは「DINING OUT」開催ごとに、長期間その土地を巡り多くの生産者さんと直接対話をしています。その中で、特にこだわりが強くひと口飲んだだけで固定観念を覆すレベルの茶葉を育てるお茶生産者・問屋さんたちを、紹介してくれました。

(以下、宮内隼人さん)
地元住民の好みを知り尽くす「今川玉香園茶舗」
まずは、広島県尾道市にある今川玉香園茶舗さん。今川さんは瀬戸内の食文化を深く理解し、地元のお客様に寄り添いながらお店を営む、昔ながらの茶問屋さんです。

何がすごいかって、尾道に住んでいる人たちみなさんの好みを把握しているんです。「◯◯さんが来たらこの合組(ブレンド)の比率」とか、◯◯さんが「いつもの」って言ったらいつものが出てくる。「それがお茶問屋の仕事です」って聞いたときにものすごく感動しました。
今川さんのお茶からは、「八女上陽さえみどり」と「玄米茶」を選ばせていただきました。

僕が今川さんにお願いしたのは、「食事どきのお茶」。さえみどりはお食事のあとに。つまりそれって、お茶単体でも楽しめるということ。ワインだったらそれ単体でも、飲みながら、ゆったりとした時間を過ごすことができる。そんな風に、ちょっとリッチな気分で楽しんでいただけたらいいなあと。

玄米茶はお食事中に飲んでいただくのがおすすめです。玄米茶のもとになる玄米は、本当なら飯米として食べたいくらいの上級のうるち米。なので、お茶漬けにしてもいいかもしれない。

僕がお茶にのめり込んだきっかけのひとつが、「DINING OUT」で、あるシェフが食事とのペアリングを試していたときのことです。一部は、ワインペアリングよりも、お茶のペアリングのほうが満足度が高いことを学びました。

その時シェフから学んだのは、いいお茶を飲むと、お酒に酔ったのと同じようないわゆる「お茶酔い」の状態になると言うこと。つまり、食事が終わったあとの満足感や幸福度が、お酒に負けないくらいすごく高いということですよね。
お酒の場合って、ワインでも日本酒でも、その土地の気候風土や文化に応じたものがつくられます。実は、お茶もそう。気候風土に大きな影響を受けるんです。
高千穂の自然と農家の叡智。天皇杯を受賞した「宮﨑茶房」
宮崎県にある農家の宮﨑茶房さんは、標高の高い高千穂の山の上で、在来品種の茶葉を育てています。

しかも、昭和初期からお茶づくりを始めて、1983年には農薬を一切使わないお茶づくりに移行。さらに2002年には農林水産祭で最高賞となる天皇杯を受賞されています。

宮﨑茶房さんがすごいのは…、あるときテレビで台湾の人が高山烏龍茶をつくっているのを観たらしいんですよ。そうしたら、「これってうちでもつくれるんじゃない?」と思って、つくってみたら、一年目でおいしいお茶がつくれちゃった(笑)。
でもそれは偶然。その後、何年かトライしたものの、同じ味にならなかった。収穫の何日前に雨が降ったとか、そういった違いがあったようなんですね。収穫時に葉がどれだけ水分を含んでいるかとか、日光にさらして自然発酵させる時間も分刻みだったりとか。年月をかけておいしさを再現できるようになって、今は高千穂烏龍茶として展開しています。ものすごく研究熱心な方なんですね。
今回、おすすめしたいのは紅茶と白茶(しろちゃ)。

ふつうお茶って、揉捻(じゅうねん)するんです。つまり、茶葉を揉むということ。でも白茶は、収穫したものをそのまま揉まないでお茶にしていく。だから、茶葉の表面がふわふわの産毛で覆われています。
白茶は、僕としては目覚めの一杯。ほんのり甘く、涼やかで優しいスッキリとした味わいなので、朝に飲んだら一日が気分よく始まるようなイメージ。
機械摘みと手摘みと両方やってる農家さんですが、今回はスペシャルオーダーなので、手摘みの茶葉100%。だから、雑味が全然ないんです。

紅茶は、紅茶らしく午後のティータイムに合わせてみてほしいのですが、贅沢だし、洋菓子にすっごく合うのでぜひ試してみてほしいです。日本各地の紅茶を飲んできましたが、宮﨑さんの紅茶は、本当においしいですよ。

オシャレで今っぽいけど実は老舗。140年以上続く「chagama」

静岡県のchagamaさんは、「ほうじ茶+クローブ」と「煎茶+レモングラス」という、ふたつのフレーバーティ。

オシャレな感じのお店の外観だし、雰囲気が今っぽいから、一見まだ若い会社なのかなって印象なんですけど。実際は創業明治10年で、現在の森社長が6代目。本当に由緒正しい老舗のお茶屋さんです。
煎茶レモングラスは、ちょっと身体が疲れたなってときのリラックスタイムに…、たとえば、デスクワークの一休みの時間に飲んでもらうのがいいかもです。

おもしろいのは、単に乾燥させたレモングラスとお茶の組み合わせじゃなくて、レモングラスの抽出液をフリーズドライして、香料代わりに入れているんです。だから、お茶を出したときにレモングラスの香りがめちゃくちゃ立ち上がる。全部、天然素材。2つとも、一切、香料が入っていません。
クローブは、身体を温める効能もあるし、血行促進・消化促進の作用もあります。そもそもが漢方にも使われるような存在。だからこそ、お休み前のリラックスタイムに飲んでもらえたら。


ものすごく若く、ルックスもイマドキの店長なんですけど(笑)、実際にお話を聞くと、とてつもないお茶愛を感じました。知識量もすごいし、味わいの説明もすごくわかりやすいんですよ。

お茶だけじゃなくて、煎茶エスプレッソや煎茶ラテも出しているんですけど、なぜかって、「お茶はお年寄りの飲み物」みたいなイメージを打破したいと。「すそのを広げたい」「高校生に飲んでもらいたい」って思ってやっている。
高い志を持って、誠実にお茶と向き合ってるから、新しい提案にもしっかりと芯がある印象でした。
旅する気分で、土地ごとのお茶の風味を楽しむ

お茶は本当に、いろんな時間帯やシチュエーションで楽しめるものだと思っています。食後の日本茶だけじゃ、もったいないですよ。
北は北海道から、南は沖縄まで、これまでに開催した土地は18ヶ所以上、発掘した食材は3000種に及ぶ。
これまでに僕は、北は北海道から南は沖縄まで、日本全国で食材を発掘する旅をしてきました。そんな中でも今回は、大きな驚きのあった、おいしいお茶ばかりを選んでいます。
DINING OUTは、生産者さんやクリエイターさんたちと一緒につくりあげるもの。今回のお茶のセレクトにしても、全員、生産者さんたちの顔が浮かぶものばかり。旅するような気分で、誰がどんな気持ちでつくっているのか、そのストーリーも含めて、土地ごとのお茶の風味を楽しんでもらえたらうれしいです。
生活シーンに合わせて楽しめる、3ブランド/6種のお茶を日本全国からセレクトしました。朝にスッキリするために、一息つく時間のお供に、様々な時間帯やシチュエーションに合わせて楽しんでほしいです。