
変態かつ偏愛!「サバ博士」に会いに和歌山へ
「サバを生で食べられるなんて奇跡!」と目を輝かせる、魚屋で料理家・クリトモさんこと栗原友さん。

前回の記事で、生食ならではのサバのお手軽レシピを提案してくれた彼女曰く、「うめぇとろサバは、脂がしっかりのっていて味が濃い! 血抜きなど下処理もカンペキだから、臭みがないのもスゴい」。
さすが、築地で魚屋「クリトモ商店」を営むだけあり、魚のプロならではの視点もキラリ。
「元気なサバたちに会いたくて」と、クリトモさんがやってきたのは、本州最南端の和歌山・串本町。

穏やかな日差しを浴びキラキラ輝く海を前に「クリトモさん、お待ちしてました! さぁ船に乗ってください」。そう話すのは、うめぇとろサバの生みの親・右田孝宣さん。

サバ博士として名を馳せる右田さんと一緒にサバの養殖場へ。


「この流域は、紀伊山地から流れるミネラルたっぷりの水と、太平洋の黒潮が交わる、いい漁場なんです。こっちに来て、うちの子たち(うめぇとろサバ)を見てやってください」と、港から10分ほどで到着した生簀を指差しながら語る右田さん。

右田「クリトモさ〜ん!こっちです、こっち」

クリトモ「どれどれ……わっ!生簀の中でサバたちがシューッて泳いでますね!!」

クリトモ「キレイでカワイイですね……!!」
右田「そうなんです、カワイイんですよ……。わかってもらえますか!」

魚の偏愛同士、クリトモさんにシンパシーを感じたのか、「うちの子たちがなぜ、生でおいしく、7日経っても食べられるのか?その理由について語らせてください!」と、(オタクに特有の)急にアツくなるサバ博士・右田さん!
スマホで養殖!?「奇跡のサバ」を支えるIT技術
聞けば、日本の養殖サバの85%は、天然のサバを獲り、生簀などで育てる【蓄養(ちくよう)】だとか。だけど天然のサバは寄生虫の危険性がひじょうに高い……。
そこで、右田さんは【完全養殖】を実践している。「完全養殖では、アニサキスがいない優秀な親魚からサバを人工孵化させ、生簀に移して約10ヶ月育てます」との説明に、「なるほど。だからアニサキスの心配なく、生食できるんですね」と、クリトモさんも納得の様子。

「右田さん、さっきからスマホをチラチラ見てますけど、生簀の上で何か測ってるんですか?」というクリトモさんのツッコミに、「僕の会社・鯖やグループは、NTT ドコモさんと一緒に、この子たち(うめぇとろサバ)の最適な飼育を自動でおこなう、システムの実証を行っています」。

聞けば、水温や塩分・酸素濃度の自動測定、飼料を与えるタイミング、さらにはサバの成長などをデジタル管理しているとか。
(提供:NTT ドコモ ウミミル)

「スゴい最先端技術ですね……。でもスマホのアプリは見やすそうなポップなデザイン! スマホ養殖って、とても親しみやすいです!」と微笑むクリトモさん。

「サバの完全養殖の歴史は浅いんですわ。だからこそ、アニサキスがいない価値のあるサバを育て続けるため、試行錯誤の毎日です!」と右田さんの思いは炎のようにアツい。
「私がうめぇとろサバをさばいてビックリしたのは、養殖独特の脂の臭みがないんですよ」と語るクリトモさん。
「それは、サバを処理する過程に漁師さんたちの仕事の流儀があるからです。ぜひ匠の技を、見ていってください」
サバ1尾に漁師4人! 最先端の科学×漁師の叡智でつくる「うめぇとろサバ」
一行は港へ戻り、うめぇとろサバの処理をおこなう施設へ。右田さんの相棒・完全養殖サバのスペシャリスト・東剛久さんがお待ちかねだ。

「水槽からサバを1尾ずつ、ザルでそっとすくいます。ストレスかけないようにね」。そして即、神経締めと血抜きをおこなうという。

「ここまでの処理でサバが暴れたり、時間をかけすぎると身が割れる。だからスピード重視!」と、サバ1尾1尾に、漁師さん4人がつきっきりの分業制! 最先端のIT技術で育てたサバを漁師の叡智で処理する……この掛け合わせが、奇跡のサバをつくっていたのか!

その後、内臓と血を抜き、さらに特殊な吸水紙を使いドリップを取り除くことで、腐敗の原因になる臭みをシャットアウトし、新鮮さを保ち続けることができるという。

「だから7日間も生で食べられるんですね! 奇跡のサバは、漁師の技術が支えていたとは」と感心しているクリトモさんに、「現地へ来ていただいたからには、うめぇとろサバの刺身、ぜひ食べてってください!」と右田さんから、粋なサプライズ!
サラッとした口どけに「養殖サバの概念が変わる」!

清々しい青空の下、アウトドアテーブルとチェアをセットして、うめぇとろサバの実食!


さばきたての、ツヤッツヤの身を頬張るクリトモさん。

「とても美味しいです。脂のりはすごいんですが、その脂はサラッとしていて。私が好きな部位はですね、噛むとコリッ、サクッって聞こえる背側の部分。味が濃くって美味です!」と、クリトモさん大満足の様子。
「めっちゃ嬉しいです。ありがとうございます!」と嬉しそうな右田さん曰く「実は〆て7日目がめっちゃうまいんです!」。
「えっ、本当ですか? 漁師さんたちのあの技で、新鮮さを保ち続けられるというわけですね」とクリトモさん驚きの様子。
「肉に『熟成』という言葉があるように、うめぇとろサバも日が経つほどに、うまみ成分であるイノシン酸が増えるんですよ。もちろん到着して数日以内に、フレッシュな味を楽しんでいただくもよし。熟成がお好みなら、サバだけに“さばかない“で、そのままの状態で冷蔵保存してください。
〆て7日目(お客さんの手元に届き、6日目)は、イノシン酸がmaxの状態! 三枚おろしにして刺身にすると、身に脂がいい具合に馴染んでいて。なんというか、本マグロの中トロのような……。とろり脂のりがよく、じんわりと広がるうまみは、未体験ゾーンですよ!」

「右田さん、確実に私、養殖の概念が変わりました! 今までは養殖=魚たちがごった返していて、清潔感がない……というイメージでした。ですが、うめぇとろサバの養殖場は、生簀も海中もすごくキレイで。何しろサバたちが気持ち良さそうに泳いでいて、ほんとに可愛かったです!」
「そう言っていただけて嬉しいです! あの子たちの無邪気で可愛らしい姿や、生産現場のこだわり、そしておいしさをこれからも伝え続けていきます!」と右田さんは嬉しそう。

最後にクリトモさんから一言。
「志が高い漁師さんたちが支える、うめぇとろサバの実力を、多くの人たちに味わってほしいですね!」

脂のりが良く濃厚な味! 血抜きなど下処理も完璧で、キレイな風味が印象的。まずはお刺身で。7日間も生食可能ですからクリトモ流「うめぇとろサバ」シンプルレシピもぜひお役立てください。