100年老舗の秘密の調味 やまつ辻田「和風香辛料」

100年老舗の秘密の調味 やまつ辻田「和風香辛料」

俺はアホだった……。
何十回も出張で大阪へやって来ていたのに、
知らなかったコトがあった。

それは、大阪には、
『日本の味の守り人』が
神のように存在していたのです。

『天下の台所』と称された大阪には、
日本中の美味しいが集まってきた。

時代が変わりゆくなか、
美味しい歴史を途絶えさせることなく
『調味』を続けてきたのです。

『調味』とは、味覚やフレーバーを
ハーモナイズする『匠の技』。

今回は、『調味』に命を捧げる、
名職人たちをご紹介しようと思います。

第1回目は、『やまつ辻田』
4代目店主、辻田浩之さんから。

※NEWS:2021年7月、鷹の爪純粋種が「なにわの伝統野菜」に認定されました!

和風香辛料、その“世界の頂点の粉”を作りたい

僕はこの人の話を聞きたくて、何度、堺へ足を運んだことだろう……。

伝統を絶やさぬよう守り続ける信念と、原材料への飽くなきこだわり。そして『調味』における匠の技。話を聞けば聞くほど、そして味わうほどに、僕は、辻田浩之という職人のすごみに、ますますハマってしまうのです。

和の薬味師・辻田さん。大学卒業後は英語教師に。31歳のとき、最後に選んだのは家業である「和風香辛料」の世界だった。剣道七段、日々の稽古を欠かさず、自らが少年剣道道場を率いる。家業と剣道修行、後進の指導に情熱を燃やす人だ

大阪南部、堺市で明治35(1902)年創業。和風香辛料の専門店・やまつ辻田の4代目当主が、辻田浩之さんです。頭に手ぬぐいをまき、作務衣姿の辻田さんは、身長194cmの大柄男で、とにかくオーラがスゴいのだ。

まるで武家屋敷のような風情のやまつ辻田。店の前を通る道が、1300年以上続く「西高野街道」。江戸時代、堺の港から高野山へ続く道として、高野山詣でに、堺商人の通商に欠かせない幹線だったという

鷹の爪を守り伝えることは、日本の食文化を守ること

やまつ辻田がある堺・福田周辺は、江戸時代から『鷹の爪』が栽培され、明治時代には東京ドーム18個分の畑が広がり、158tを収穫する一大産地だったらしい。「ウチでは創業以来、代々『鷹の爪 純粋種』を用い、和風香辛料をつくっているんです」。そう語る辻田さんの口から衝撃的な事実が……。

「昨今、日本で流通している唐辛子の99%は外国産なんです。僕の家族は残り1%の国内産唐辛子の中でも希少な『鷹の爪 純粋種』を120年間守り続けてきました」と眼差しはアツい。

しかも、「みんな何でもかんでも『鷹の爪』って言うけど間違いですよ!『鷹の爪』とは何百ってある唐辛子のなかの1品種。外国産品種にはない日本独特の美しさ、可愛いさ、そして品のある香りと強い辛みがあります」。

聞くところによると、残念なことに昭和30年以降、この街から『鷹の爪』の畑が次第に姿を消してゆくことに……。やまつ辻田は、自社畑で純粋種を栽培。摘み取り、種取りをして、国内のつながりのある農家さんに種を送り、栽培をお願いし、収穫したすべてを買い上げることで『鷹の爪 純粋種』を守り続けてきたのです。

100年以上、純粋種の遺伝子を守り、育てていく辻田さんの信念に、僕は胸が熱くなったのです!

希少な『鷹の爪 純粋種』を栽培している畑を見学させてもらった。美しい真っ赤な実が、緑一面の畑の中で映える

「この『鷹の爪』は外国産唐辛子と比べて、辛さも強く、香りも格段にいい。味わいが澄んでいるから、七味にしたときに、ほかの素材のジャマをしないんです」。そうそう! 僕が大好きな辻田さんのところの和風香辛料が、「大からから極上七味(辛口)」なのです。 

その魅力は、何と言っても7つの原料が出合うことで醸し出される、香りと味わいのハーモニーでしょう。「細かい粉と粗い粉を混在させて、7つの味できちっと調和するのを狙っています」。

その原材料を知って僕はなおさら驚いた。「大からから極上七味」に用いる唐辛子は、江戸の頃より守り伝えられてきた、国内産『鷹の爪 純粋種』だけを使うのだから!

「大からから極上七味」に使う唐辛子は、『鷹の爪 純粋種』のみを使用。そこに金胡麻、山椒、柚子、ケシの実、青海苔、紫蘇を、季節ごとに変わる素材の状態をみながら重ね合わせていく

ほかにも華やかな香りを放つ山椒をはじめ、独自の焙煎方法でコクを深めた黒胡麻など、もうそのどれもが最高級品といえる素材ばかりなのです! 辻田さんなぜにそこまで。

「僕ね、めっちゃ凝り性なんですわ。『鷹の爪 純粋種』を守り続けたいのも、好きでやっていることやから。えぇもんをつくりたいって欲が強いし、『世界の頂点の粉』をつくりたいんです」。辻田さんカッコ良すぎます。オトコが惚れるオトコ!

「楠本さん、すき焼き作りますから、食べてってください。僕が気に入っている『大からから極上七味』の使い方をお教えしましょう。溶き卵に、七味をたっぷり入れて混ぜてください。まだまだ、いや、もうちょい!」 

割り下でさっと炊いた肉を、七味入り溶き卵にくぐらせて、辻田さんいただきます! なななんですかこれは! 清々しい唐辛子の辛みと、山椒のヒリリとした刺激と高い香りに続き、胡麻の香ばしさや青海苔の風味……。時間差で押し寄せる和風香辛料のあらゆる風味と、甘辛い割り下が絡んだ肉との相性、めちゃ最高じゃないですか!!!

溶き卵に「大からから極上七味」をたっぷり入れることで、いつものすき焼きの味わいがグンとジャンプアップする

「おいしいでしょう」と辻田さんニンマリ。これはクセになる味!

「他にもいろんな七味をつくっています。ほとんど姿を消してしまった国内産唐辛子3種を調合した『極上七味』もオススメですし、より強く、柚子の香りを楽しみたいなら『柚七味(辛口)』を。

柚子にもこだわっています。契約農家さんが育てた実生柚子(無農薬)の柚子皮を乾燥させ、半日かけて石臼で挽いた『柚子粉』を使っています」。

僕は辻田さんに言われるがまま、「柚七味」を小皿に少量移し、醤油を少〜し垂らし、即席の生七味風なるものを作ってみた。そして小さなおむすびの上にちょんとつけて味わえば……。おにぎりの透き通った甘みの中で、柚子の清々しい香りがふわっと広がるではないですか! コレはおかずいらずな美味しさですね!

柚子には接木(つぎき)と実生(みしょう)と呼ばれるものがある。実生柚子は、種から育てて実がなるまで20年かかると言う。その実生柚子の皮を石臼引きした柚子粉をはじめ、大辛『鷹の爪 純粋種』、山椒、高知産の青海苔、金胡麻など、それぞれの個性を生かすように調合

「今日は取材やから、食べてもらって、ウチの和風香辛料ならではの魅力を知ってもらいたいからねぇ。次は、鶏の唐揚げに『粉山椒』を」。辻田さん、おもてなし感がハンパない!

粉山椒と塩を3対1で混ぜた山椒塩を作り、唐揚げにハラリとかけて味わう。すると唐揚げのジューシーなうまみと、山椒の鮮やかな香り、これは素晴らしいタッグ! そしてヒリヒリしすぎない、上品な口当たりだから、ずっとずっと芳醇さが続くのです。 

辻田さん曰く、「この『石臼挽き朝倉粉山椒』には、国内の山深い里で山椒を栽培する契約農家が育てた『山朝倉山椒』の一種を使っています。石臼挽きですが、あえて均一に挽かないことで、粗めの粒子と細かい粉が混じり合う。そやから、山朝倉山椒がもつ複雑で豊かな香りと刺激が際立っていると思います」。

昔ながらの石臼製法が引き出す、山椒の豊かな香りには、なんと言うか体が浄化されるかのよう! 僕はただただ目を細めるばかりでした。  

「七味唐辛子や粉山椒は決して主役にはならない」と辻田さんは言う。しかし、お料理にほんのちょっと添えることで、いつもの味が、さらには食材のうまみがさらに広がり深まるのです。僕は思う。脇役ではなく、素材の品格をぐっと持ち上げてくれる、これぞ『名脇役』なのだと!

「楠本さん、嬉しいお言葉です。香辛料とは、心と体を豊かにする『魔法の粉』や思ってます。特に和風香辛料は日本の和の心ですから、香りが心を癒すのです」。

日本に生まれて、ここ大阪で『日本の味の守り人』辻田浩之という職人に出会えて心底嬉しい。彼が創り出す和風香辛料は、心と体に訴えかける『人を豊かにする力』があると、僕は断言したい。

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