ヘベレケ・カオリンがゆく、今夜は名店飲み【たこ梅】

ヘベレケ・カオリンがゆく、今夜は名店飲み【たこ梅】

1世紀以上の時を刻んだ老舗には、
人と街に揉まれた唯一無二の空気がある。
呑んべえのワタシは、
そんな名店に憧れ、そして沼にハマってゆく…。

さあ、今宵は、大阪が誇る名物
「たこ甘露煮」と「おでん」を味わいに。
日本一古いおでん屋「たこ梅」の暖簾をくぐろう。

道頓堀川沿いで異彩を放つ「日本一古い、おでん屋」

ひときわ目立つ巨大看板に、川の水面を照らす色とりどりのサイン。ここは浪速のブロードウェイかいな、って言いたいくらい煌びやかな町・道頓堀は、かつて芝居町でもあった。劇場が寄り集まり、川側の通りには芝居小屋が軒を連ね……。

そんな往年の風情を、醸し出す一軒の店がある。創業・弘化元(1844)年のたこ梅だ。

芝居帰りの客や役者、さらには数々の文人にも愛された、「たこ甘露煮」と「関東煮(かんとだき)」が名物の上燗屋。「江戸時代、上等の酒を上々に燗をつけて出す店のことを『上燗屋』と呼んだんです」とは5代目・岡田哲生さん。 

今の店は戦後、昭和24年に建てられた。道頓堀界隈で、今や一軒だけになってしまった木造瓦葺き、昭和そのまんまの店。5代目・岡田哲生さん書の暖簾をくぐり格子戸を開け店の中へ

おでん鍋から立ち上る湯気、店に満ちるだしの香り……。店自体も長年、煮込まれているような、何物にも変えがたい空気が流れている。

関西ではおでんを「関東煮(かんとだき)」と呼ぶ。岡田さんによると「ウチで伝わっているのは、中国・広東省の方が野菜や魚などを鍋でごった煮しているのを見た、初代・梅次郎が考えたという説ですね」。

広東煮が関東煮へ変わったのか……諸説あるそうだが、関西人好みの少々甘めのだしが、堪らなくうまくて。その味がふと恋しくなると、いつもふらっとこの暖簾をくぐる。

年季の入ったカウンターに座れば、それだけでジーンと感動するし、目の前の、ぐつぐつ煮える鍋を見ているだけで、いくらでも飲めそうだ。

「たこ甘露煮」700円(2串、税抜き)。「お土産にも喜ばれるんです」。岡田さんが常連向けに作り始めた、たこ1匹丸ごと使った甘露煮を、GOOD EAT CLUBで限定販売させていただくことに!

「のっけから、燗酒いっときますわ。それと、タコもお願いします」。何が好きってこの店の名物「たこ甘露煮」。「僕が子どもの頃から食べてた味ですわ」と岡田さんが言うたこ梅の名物であり、初代・梅次郎さんが考案した一子相伝の味……。

聞けば、生の真蛸に醤油や砂糖、酒、ちょっとのお酢などを加え「ふきこぼさんよう付きっきりで」炊くこと小1時間。飴炊きのように艶やかなその「たこ甘露煮」が出来上がる。

串に刺したタコを噛み締めると、歯切れが良くって驚きの柔らかさ! 咀嚼するほどに深いうまみがジワリ、ジワリと滲み出るのだ。錫のちろりで燗をした「白鹿 特別純米 山田錦」を、錫の酒器でクイッとやる。格別なんて言葉が安っぽいくらい、もう至福の極み……。おでんにたどり着く前に。(笑)

5代目・岡田哲生さん。本店のほか梅田に3店の支店を持つ

名物の鯨をアテに、おでん呑み

四角い鍋には、目移りするくらい、魅惑的なタネがグツグツ煮込まれている。なんちゅうても、まずは鯨の部位の中でも最高級とされる、サエズリ(ヒゲクジラの舌)。「サエズリをおでんに使うのは、初代が考案したんですわ」と岡田さんが胸を張る。

時代を超えたスペシャリテだ。フルフルと柔らかなサエズリを舌にのせれば、しぶというまみがこれでもかと言わんばかりに押し寄せるではないか。

鍋は間仕切りされ、向かって右側はすぐに出せるタネ。左では素材に味が染みるまでじっくり炊く

食べるのは一瞬だけど、だしづくりやタネにかける時間と手間はハンパない! サエズリは下ごしらえに1週間、こんにゃくは2日かけて仕込み、2日間じっくり煮込む。

命のだしは、カツオをベースに、サエズリから滲み出るエキス、前日から継ぎ足しただしを合わせながら、「沸かさんと、この味にならないんです」と岡田さんは真剣な眼差し。

だしをめいいっぱい吸った大根をハフハフ頬張れば、丸みのある深いうまみがじんわり響き、食べるほどに合わせる酒はうまくなるのだ。はぁ〜燗酒、もういっちょください(笑)。

半世紀以上使い続けている、錫のコップとちろり。裏底には錫器製造のレジェンド「錫半」(1996年閉店)の刻印があるものも。コップは二重構造になっていて、中が空洞。重すぎず軽すぎず、しっくり手に馴染む

ワタシの隣席では、白髪混じりのおじいちゃんが燗酒をチビチビやっているし、店奥のテーブル席では子連れ客がおでんをモグモグ食べている。ボンボン時計の温かみのある音や、店に立ち込めるだしの香りが入り混じり……。今すぐに作れて言うても作り出せない酒場遺産的シーンに、酔いしれてしまうのです。(実際、酔うてるんやけど)

「先代であり叔父の岡田正弘がよう言うてたことがあります。『うちの店はな、たこ甘露煮や関東煮、酒を売ってるだけちゃう。父から子どもへ……3世代、4世代のお客さんがぎょうさんいてはる』と。かつて叔父は、関東で暮らす常連さんに、伊丹空港から飛行機に乗り、おでんを届けていたこともありましたね」と、当時を懐かしむ。岡田さんの代になっても「嫁はんに、おでん食わせたいから送ってほしい」という大阪出張時には必ず顔を見せるビジネスマンや、「たこ梅の味が恋しいから、おでん取り寄せられへん?」という大阪出身のお客さんの声も。

「常連さんの要望ありきで生まれたのが、お取り寄せ限定の『たこ梅おでんセット』ですわ」。

だしが染みた大根に、具沢山のひろうすなど定番12品に、名物のサエズリとコロを2串ずつ。「1日でも早く平穏な日々が訪れますように、と願いを込めて」通常6600円が、5670(コロナゼロ)円に。岡田さんの心意気に惚れる! ぜひ家族で鍋を囲みながら大阪の味を楽しんでもらいたいんです! 

「こないだね、若い男性のお客さんが、『大阪行くんやったらたこ梅行って来いって父に言われて』と来られてね。美食家で有名だった、小説家の開高健さんも、かつてお父さんに連れてこられたのが最初やったと聞いてます」。味の記憶が人と人とを紡いでゆく。

じつは平成のはじめに、先代がなくなり、その後、女将が病で倒れ……。本店は平成14年に閉店を余儀なくされた。ビジネスマンだった岡田さんが跡を継ぎ、本店の復興に力を注ぎ平成19年に復活を遂げたのだ。

「経営の立て直しは大変でしたが……。甘露煮も関東煮も、僕が子供の頃から慣れ親しんだ味。舌に刷り込まれた記憶があるから、味の継承に苦労はなかったですわ」。代々受け継いできた味づくりは変えないし、変えるつもりもないという。

昭和24年、戦後に建て直した店は、大工さんが記念に彫ったタコの彫物も、テッカテカの擬宝珠がついた「日本橋」と彫られた欄干も、当時と変わらぬままそこに佇んでいる。

作り手と客、客同士の関係性も含めた、時空を超えた老舗酒場がたこ梅。「親から子へ。100年先も、お客様を見守り、そして帰って来られる場所を守り続けていきたいです」。

この記事の商品

たこ梅 本店
毎週10個限定!日本一古いおでん屋/たこ梅「定番おでん5670セット」(月曜21時締切|金曜発送)
¥6,124
商品を見る
ヘベレケ・カオリン
ヘベレケ・カオリン

日本一古いおでん屋の名作が、自宅で気軽に食べられる!だしのうまみが染みた定番12品に、名物・鯨サエズリ&コロ各2串がセットに。贅沢な鍋が、お家時間に幸せをもたらしてくれますよ!

たこ梅 本店
毎週10個限定!日本一古いおでん屋/たこ梅名物「たこ甘露煮」 (月曜21時締切|金曜発送)
¥5,400
商品を見る
ヘベレケ・カオリン
ヘベレケ・カオリン

どどーんと1匹、真蛸の姿煮はインパクト大! 日本古いおでん屋・たこ梅の初代が約180年前に考案したスペシャリテは、歯がスッと入る驚きの柔らかさです!

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