「UMAMI」が世界を救う!
村田さんは「日本料理アカデミー」の理事長としてもご活躍されていて、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録を進めた中心人物の一人ですし、世界のトップシェフたちを積極的に研修生として受け入れていらっしゃいます。村田さんに語っていただいた「UMAMI」が世界を救う論、ぜひ読んでみてください。(楠本)

村田さん(以下すべて同じ)
日本料理は人類を助けることができる。そう真剣に思てます。本題に入る前に、少し語りましょうか。
僕らみたいな大型の霊長類は、1日30種類以上の食材を食べるようにできている。小型動物、たとえばコアラのようにユーカリばっかり食べてたら、ユーカリが絶滅するやろ。そうならんよう、人間は同じものを食べると飽きるように作られてるんや。
そやけど赤ちゃんは、お母さんのおっぱいを半年間飲み続けるわな。飽きて飲まんかったら死んでしまうから、飽きさせない秘密がおっぱいにはある。「糖質、脂質、うまみ成分」が含まれている。それらには脳の快感中枢を刺激してドーパミンを分泌させる働きが。また食べたくなる「病み付きの味」やね。
糖質はパン、ナン、パスタ、コメ……どこの国でも食うたりするわけ。それに、ほとんどの国の料理は油脂を中心に構成されている。ただ1ヶ国、1民族だけが「うまみ成分」を中心に料理を構成している。それが日本なんや。
日本料理がローカロリーでヘルシーな理由

日本料理で最も重要とされるだしは、昆布からとれるグルタミン酸と、鰹節から出るイノシン酸で約8倍のうまみを得ることができる。さらに干し椎茸が合わさるとグアニル酸の相乗効果で16倍に。これが日本料理のだしであり、油脂分を含まないからカロリーはゼロですわ。
食事を例に挙げましょうか。懐石料理なら、デザートの前までやと約65品目もの食材を摂取しカロリーは1000kcalしかない。これが、フランス料理のコースになると約25品目、料理だけで2500kcalになる。さらにデザートやチーズが付いたら3500kcal。イタリア料理かて19品目、2500kcalにもなる。このカロリー摂取の多さが生活習慣病の原因になり、生命の危機に瀕する場合も。
そこでや。「うまみのレベルを上げれば、オイルの量を減らしても満足度は一緒」と理解した世界中のシェフたちは、ソースを軽くするために日本料理を学びはじめた。食を楽しみながら健康を維持するには、カロリーが少ない日本食が最適やからな。それを助けるのは、やっぱりだし。大袈裟やない、だしのうまみ『UMAMI』が世界を救うんです。
世界のシェフたちもだしをひき始めている

今、フランスの3つ星レストランの厨房には昆布、醤油、みりんは必ずある。また、デンマーク「ノーマ」のレネ・レゼピや、ロンドン「ザ・ファット・ダック」ヘストン・ブルメンタール、パリ「アストランス」のパスカル・バルボら、ウチの店で研修したシェフたちは、自分の店でだしをひいてる。
なかでもレネは、トナカイの後ろ足をボイルし、冬の間ずっと極寒の空気にさらして干したんやて。そして、デンマーク大学と協力して地元の海でグルタミン酸を抽出できる海藻を見つけ、これも干しよった。干しトナカイを鰹節みたいに削り、煮出した海藻と合わせてだしをひいている。つまり、だしのうまみを中心に構成された日本料理の考え方が、世界中のトップシェフたちを席巻している。
世界中の食シーンで、日本食が、だしが注目されてる一方、残念なことに自国では、何が和食で何が洋食なんか分かってない日本人が増えてるんや。
こないだ参加した、小学2年生の食育授業。「好きな日本料理は?」て子どもらに問いかけたら、「先生、ハンバーグやスパゲッティは日本料理なん?」と……。「ほな君ら、肉じゃが知ってるか? タマネギと肉とジャガイモ炊いてるやつ」て言うたら、「あぁそれシチュー!」やて。6、7位目くらいにようやく、寿司が出てくるわけ。
僕が理事長を務める「日本料理アカデミー」は、食育にも力を入れる中、和食の文化が日本人の暮らしの中で生き続けるかどうか、今がまさに瀬戸際やと非常に危機感を持ってます。課題は多いですが、まずはご飯、そしてだしをきかせた汁物とおかず、漬物の「一汁三菜」。この食生活を取り戻すことが今、最も重要やと思うんです。次世代の子どもたちへ、だしとうまみの大切さをちゃんと伝授せなあかん。
菊乃井が「だしパック」を販売する理由
ご家庭では「毎日毎日、だしとってるヒマがない」といった、お忙しい方々も多いでしょう。そんなときは、菊乃井が自信を持ってオススメする、「だしパック」つこうてください。
ウチは、乳幼児などお子さんから、嚥下食に入った年配の方にも食べてもらえるもんをつくっています。しかも菊乃井の商品には、「野菜は炒めんと、だしで炊いてください」、「クリームやバターを使わず料理をつくってください」など主義主張をしっかり入れさせてもろてます。
このご時世、在宅勤務などで時間ができた方の中には、料理にハマる男性もおられるかもしれません。ちゃんとだしをとりたい方には、菊乃井のだしレシピを伝授します。※
飽食の今だからこそ、日本人として何を食うべきかという選択を正しく行わんと。まずはだしを知るところから。未来の子どもたちのためにも「自分らの食文化への回帰」を見つめ直すべき時代やと思います。
「おいしい一番だし」のとり方
(吸い物20人分)
利尻昆布…60g
枕崎産 本枯節…100g
軟水…3.6ℓ
1、鍋に水をはり昆布を入れて火にかける。60℃で1時間加熱する。
POINT:必ず60℃をキープ。80℃以上になると昆布のぬめり(増粘多糖類)が出てうまみが出にくくなる。
2、昆布を取り出し85℃まで加熱したところに、鰹節を投入。
3、鰹節が沈んだらすぐにこす。
「子どもにも高齢者にも安心して食べてほしい」という村田さんの想いに惚れています! このだしパックで、お子さまに本物のだしのうまみを感じていただきたいですね。